A Little Grammar Goes a Long Way

関西外国語大学教授 岡田伸夫が英語文法を考察するコラム




前置詞の of にはいろいろな意味や用法があります。
次の (1)-(14) の例を見てみましょう。

(1) a friend of my father's = a friend of my father
(2) There were strong objections from the inhabitants of the island.(島民)
(3) Let's go to the front of the house.(家の玄関)
(4) The wines of France are more expensive than those of California.(フランスワイン,カリフォルニアワイン)
(5) a. a painting of my father's
b. a painting of my father(父を描いた絵の1枚)
(6) Who is the oldest of the three?(3人の中で一番年上)[全体]
(7) Everyone is speaking highly of this movie. [主題]
(8) a cup of coffee(コーヒー1杯)[内容物]
(9) a woman of energy and ambition
(10) a child of six(6歳のこども)
(11) the fact of his failing the exam
(12) The arrival of the Nozomi Superexpress was announced.
(のぞみの到着のアナウンスがあった)[主語] cf. The Nozomi Superexpress arrived.
(13) The doctor's examination of the patient took one hour.(その医者が患者を診ること)[目的語] cf. The doctor examined the patient.
(14) She is fond of classical music. (She likes classical music.)

こうやって並べてみると of にはいろいろな意味や用法があることがよくわかります。今日は,上の (1)-(14) のどのグループにも入らない of の意味をとりあげます。

be made of と be made from
材料が何であるかわかる場合には be made of を使い,材料が外見からは容易にわからない場合には be made from を使います。be made of と同様に be made out of も使います。

a. You rarely find toys made (out) of solid wood.―Alexander (1988, pp.331-332)
b. Sam made/formed/built/assembled/constructed/
erected/manufactured/produced/created a houseout of bricks.―Jack end off (1990, p.116)
c. The committee is made up of representatives from all the universities.―LDOCE2, p.770

a. Beer is made from hops.
b. Sam made/formed/built/assembled/constructed/
erected/manufactured/produced/created a house from bricks.―Jack end off (1990, p.116)

日本語では「…からできている」と言いますから,英語の be made from はすっと入ってきます。でも,of=「…の」と教わっていますから,of が日本語の「…から」にあたるということは意外に思うでしょう。
die of と die from
病気や飢えで死ねば die of,それ以外の原因(たとえば,けが)で死ねば die from を使うと言われることもありましたが,今ではそのような区別はなくなりました。病気や飢えで死ぬときに die from,それ以外の原因で死ぬときに die of を使ってもさしつかえありません。

a. She died of pneumonia.―CCELD, s.v. of
b. He died in prison. From pneumonia.―CCELD, s.v. from

(18) The victim died of/from loss of blood.―Langendoen (1970, p.74)

次の Collins COBUILD English Usage, s.v. die の次の説明はそのことをはっきりと述べています。

(19) When someone dies as a result of a disease or injury, you can say that they die of the disease or injury or die from it.
An old woman dying of cancer was taken into hospital.
His first wife died from cancer in 1971.
Many of the injured sailors died of their wounds.
Simon Martin died from brain injuries caused by blows to the head.

(18) の loss of blood は原因を表しますが,次の (20) では主語として現われています。

(20) Loss of blood killed the victim.

loss of blood が,原因であり,道具ではないということは,次の (21) が奇妙な文であるということからもわかります。

(21) ?John killed the victim with loss of blood.

それに対して poison は,次の (22)b に見られるように,道具として使えます。

a. Poison killed the victim.
b. John killed the victim with poison.

The victim died of loss of blood. の loss of blood が原因を表すと言っても,この文を答えとして引き出す質問は,How did he die? あるいは What did he die of ? であり,Why did he die? ではありません(Quirk et al. 1985, §9.49 Note [b])。

もともと起点(Source)を表す from が因果関係の原因を表すことはごく自然な転用です。日本語でも,彼は義務感から彼女の後を追った」「大雪になったから出かけられなかった」のように起点を表す「から」が原因を表します。

ついでですが,「から」が名詞句の「義務感」を従えたり,文の「大雪になった」を従えたりすることは,英語の before などが名詞句を従えたり(I had lunch before the concert.),文を従えたりする(I had lunch before the concert began.)ことと同じです。

不思議なのはどうして死因を表すのに of が使われるかということです。

of のもとの意味は?
実は,of は古英語(450-1100)では「(起点)から」(out of, from)という意味をもっていました。だから現代英語でときどき起点の意味で顔を出すのです。

ついでですが,「…から離れて」を表す off は of から分化してできたものです。of は強勢のない形であり,off は強勢のある形として発達してきました。of の f の元来の発音は [f] であり,of は中英語(110-1500)では [of] と発音されていましたが,母音に強勢がないために軟音化して [v] になり,16世紀の中頃には普通の発音は [ov] になっていました。一方,off は母音に強勢があるために f の発音は [f] のままなのです。

次に,起点の痕跡をとどめる of のその他の例をいくつか見ておきましょう。

independent of と independent from
「…から独立している」というときには independent from ではなく independent of であると習いましたね。どうして independent from じゃないのかと不思議に思われたことがあるでしょう。この of ももともと起点の of で,ここでは分離を表しているのですね。

ところで,実は independent of だけではなく independent from も使われます。independent from の実例を1つあげておきましょう。

(23) Since they do not correspond to transformations individually, it is possible that they operate in a system that is psychologically independent from the grammar.―Bever (1975, p.594)

副詞の independently もof句と from句のどちらも従えます。

(24) Since the strategies are not based on transformations such developmental shifts suggest strongly that the system of comprehension emerges at least partially independently from other systems of linguistic knowledge. These considerations allow us to define the notion of "perceptual clause," independently of "grammatical clause."―Bever (1975, p.594)

consist of
consist of ...=「…からなっている」と覚えましたが,この of がなぜ「(材料・要素)から」という意味を表すのかも不思議でした。この of も起点の of ですが,ここでは材料・製品関係の材料に転用されているわけです。

(25) The triangle consists of three lines.(三角形は3つの線からなる)

「5人家族」は a family of five と言いますが,これは「5人からなる家族」ということです。

make fun / a fool of
make a fool of ...=「…をばかにする」,make fun of ...=「…をからかう」というイディオムも覚えました。of が「…から」という意味だったということを知れば,make a fool of ...は「…から/…を材料にしてばかをつくる」,make fun of ...は「…から/…を材料にして滑稽なものをつくる」ということだったのかと納得できるでしょう。

Her parents made her a doctor. を Her parents made a doctor of her. とすることができるのもこれと同じです。

次の (26)b の out of ... も納得できますね。

a. An MIT education made me (into) a linguist.
b. An MIT education made a linguist out of me.―Jackendoff (1990, p.118)

Sam built a house out of/from old railway sleepers. などは out of でも from でもいいのですが,(26)b では out of の代わりに from を使うことはできません。MIT made a linguist from me. に対して,あるアメリカ人インフォーマントは,「この文は,MIT が私の遺伝子をもとにしてクローン人間をつくり,その人が言語学者になったというような状況が考えられる。」とコメントしています(吉岡和恵さんのレポート)。(26)b では同じ私が言語学者になったということを言っているわけで,MIT 入学前の私を知っている人は言語学者になった私を見ても私であるということがわかるでしょう。ここでも「材料が何であるかわかる場合には be made of を使う。材料が外見からは容易にわからない場合にはbe made from を使う。」という規則が働いているのでしょうか。

ask a question of
学校では二重目的語構文の1ケースとして,ask+人+a question を取り上げ,応する第3文型は ask a question to ... ではなく,ask a question of ... であると教えます。でも,どうして to ではなくて,of なのでしょうか。ask の目的語は質問です。質問というのは,定義上,相手から答えをもらうことを前提にしています。この of は答えの出所を表しているのです。

ところで,実際には,ask a question of ... はあまり自然な言い方ではありません。Pinker (1989, p.395 Note 6) は次の (27)a, b にあげる判断をしています。

a. ??I already asked that question to him.
b. ?I already asked that question of him.

『ジーニアス英和辞典《改訂版》』は ask a question of ... を《まれ》と表記しています。

rob 人 of 物
「steal 物 from 人=rob 人 of 物」という等式を見たことはありますか。「rob 人 of 物」は「物から人を奪う」ということだったのですね。動詞の目的語は動詞の力を受けるもの,言い換えると Patient(被動者)を表します。次の (28)a は時計が彼から離れていったことを表し,(28)b は彼が時計をもっている状態からもっていない状態に変わったことを表します。

a. They stole his watch from him.
b. They robbed him of his watch.

次に,起点の of が使われている例で思いつくものをいくつかあげてみましょう。

(29) May I ask/beg a favor of you?
(30) You expect too much from/of me.
(31) The old lady is never free from/of pain.―LDOCE2, s.v. free1
(32) She comes from/of a long line of actors.―OALD5, p.224

come from/of ... には「…から結果として出てくる」という意味もあります。

(33) "I'm fat." "That's what comes of not exercising."―LDOCE3, p.264
cf. "I feel sick." "That's what comes from drinking too much."―LDOCE3, p.263

次の (34)a, b は,彼がどこから走ってきたかに関して言っていることが少し違います。

a. He ran from the house.
b. He came out of the house.

a の from the house では the house が起点としてとらえられていますので,彼は家の建物の中から走って出てきたときにも,家の玄関から走り出したときにも使えます。それに対して,b の out of the house では the house が立体としてとらえられていますので,彼は家の建物の中から走って出てきたときだけに使います。


次の (35) ab の2つの空所にどのような前置詞が入るか考えてみてください。

(35) The ICA process consists ( a ) making successive cuts in a sentence until all the words of that sentence are separated ( b ) each other.(IC分析の過程は当該の文のすべての語が互いから切り離されるまで区切り続ける作業からなる。)

この文は Whitman (1975, p.14) から取ってきたものですが,a では of,b では from が使われています。でも,of も from も起点を表すというのなら,a で from,b で of を使ってもいいのではないかという疑問が出てくるでしょう。今日話してきたことは,consist of で of を使うことが,恣意的(arbitrary)ではなく,動機づけられている(motivated)ということを示すことはできますが,consist from とか separate A of B とかは言わないということを予測する(predict)ことはできません。でも,「consist of で of を使うことには何の理由もない。イディオムだからそのまま覚えるしかない。」とあきらめてしまうことに比べれば一歩前進でしょう?

今日は,現代英語で使われているいくつかの of に of のもとの意味(現代英語の from, out of に見られる起点の意味)が残っているということを見てきました。of のもとの意味を説明しないで be made of や independent of をイディオムとして与えると,学習者は無意味記憶を強いられることになるでしょう。高校生は,be made of や independent of などを教わるときに,of のもとの意味にちょっと触れてもらうと「腑に落ちる」のではないでしょうか。

Alexander, L. G. (1988) Longman English Grammar, Longman, London.
Collins COBUILD English Usage (1992) Collins, London.
Jackendoff, Ray (1990) Semantic Structures, MIT Press, Cambridge, MA.
Langendoen, D. Terence (1970) Essentials of English Grammar, Holt, Rinehart and Winston, New York.
Pinker, Steven (1989) Learnability and Cognition: The Acquisition of Argument Structure, MIT Press, Cambridge, MA.
Quirk, Randolph, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, and Jan Svartvik (1985) A Comprehensive Grammar of the English Language, Longman, London.

Collins COBUILD English Language Dictionary (1987)
Collins, London. [CCELD]
『ジーニアス英和辞典《改訂版》』(1994) 大修館書店.
Longman Dictionary of Contemporary English (1991)
2nd ed., Longman, Harlow. [LDOCE2]
Longman Dictionary of Contemporary English (1995)
3rd ed., Longman, Harlow. [LDOCE3]
Oxford Advanced Learner's Dictionary (1995)
Oxford University Press, Oxford. [OALD5]

Bever, Thomas G. (1975) "Functional Explanations Require Independently Motivated
Functional Theories," Papers from the Parasession on Functionalism, ed. by Robin
E. Grossman, L. James San, and Timothy J. Vance, 580-609, Chicago Linguistic Society, Chicago.
Whitman, Randal L. (1975) English and English Linguistics, Holt, Rinehart and Winston, New York.

京都教育大学教授 岡田伸夫
「英語の教え方研究会 NEWSLETTER 2」